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横尾忠則全ポスター展@国立国際美術館 [アート]

長いお盆休み明けからいきなりキツイ一週間でした。
ぐうぅっ。。。
さて前回日記から、また随分月日がたってしまいました。
プライベートでは割とあちこち動き回ってはいるのですが
とりあえず昨日7月最後の土曜日(古っ!!)に行ってきた
展覧会についてです。



◆横尾忠則全ポスター展
 The Complete Posters of Tadanori Yokoo
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
【会場】 国立国際美術館(大阪・中之島) [Link]
【会期】 2010年7月13日(火)~9月12日(日)

確かついこのあいだ兵庫県美でも大きな展覧会があった
ばかりでしたね。見逃して残念に思っていました
日本のグラフィック・デザイン界の大御所、横尾忠則さん。
今回は横尾さんがこれまでに手がけたポスターに焦点を絞り
800点を超える全作品を一堂に集め展示する企画展です。

エスカレータを降りた地下3Fの会場入り口では三つの
タワー状に配されたポスター群と、奥の壁には
巨大なイラスト(例のチラシの黒覆面の女性)がお出迎え。
いきなりインパクト大。展覧会でも掴みは重要ですね~!

中の会場は年代順にこれまで横尾さんが手がけたポスターを
展示していく構成だったのですが、さすがにキャリアの長い
横尾さん。おなじみの極彩色の作品が天井の高い美術館の壁を
縦横無尽に覆い尽くしている光景は壮観でした。
出品目録も一面字だらけですよ。

学生の頃は強烈な色彩がちょっと苦手だったのですが
今回じっくり観てみて、いや~、何であれだけの強烈な
色彩を操りながらデザイン的に破綻していないのか
思わず唸ってしまいます。
細かなモチーフにも楽しいデザインがそこかしこに
散りばめられていてました。

横尾さんのポスターは、クライアントの内容よりもまず
”横尾忠則”という個性が真っ先に目に飛び込んでくる
ような、独特の世界がありますね。
下手したら何のポスターか憶えていないような(笑)。
あのごちゃ混ぜ感は、ある種日本人の持つ感覚をとっても
よく表現しているのかも知れません。
今回、個人的には西洋と東洋の宗教画をミックスしたような
作品が良かったなぁ。

会場にはデザイナー志望風の若い方の姿を数多く見かけ
相変わらずの人気振り。
衰えぬ創作意欲をまのあたりにして非常に元気を貰った
ような、そんな展覧会でしたよ。

実はこの時期会場ではもう一つ、束芋さんの個展があった
のですがゆっくり観過ぎて時間切れ。
とっても良いという噂を聞いていただけに残念でした。
忘れずにまた出直さなければ。。。!





お昼ご飯抜きで観ていたので空腹MAX!!
帰りに美術館のすぐ近くにあるお店『カンティーヌ』で
早めの晩御飯。
肉と白インゲンを煮込んで仕上げにオーブンで焼く
フランス南西部の郷土料理「カスレ」のセットを頂きました。
鶏肉と豚肉、ソーセージまで入ってボリューム満点。

けど、やっぱりポトフのセットにすればよかったかな?
もう若くないな~



このところ何故か紅茶にすっかりはまっています。
お茶の葉を切らしていたのでもう1件だけ寄り道。
大阪・中之島で紅茶といったら老舗『MUSICA TEA』ですね。
今回はゴパルダラ茶園産ダージリンのセカンドフラッシュで。
香りが強めの、いかにも紅茶!という感じが好みです。
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死なないための葬送~荒川修作初期作品展@国立国際美術館 [アート]

ルノワール展の後は国際美術館のB2フロアで開催中だった
もう一つの展覧会を観てきました。
ニューヨークを拠点に活躍する美術家荒川修作さんが
1961年12月に渡米するまでに日本で制作した初期の立体作品
20点あまりの展示です。



死なないための葬送 - 荒川修作初期作品展
 Funeral for Bioengineering to Not to Die -
         Early Works by Arakawa Shusaku
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
【会場】 国立国際美術館(大阪・中之島) [Link]
【会期】 2010年4月17日(土)~6月27日(日)

初めてお名前を意識したのは、確かTVで観た
岐阜県養老町にある荒川さんが企画・設計したテーマパーク
「養老天命反転地」(Link)の紹介番組だったでしょうか。
すり鉢上の箱庭に、エッシャーやデ・キリコの絵の中の世界
を再現したような不思議なオブジェや建物が並ぶ景観に
是非一度訪れてみたいものだと思ったものです。

また、岡山県の奈義町現代美術館[Link]にも
建築家の磯崎新さんとのコラボレーションによる
「遍在の場・奈義の龍安寺・建築する身体」
という円柱の部屋の側面に龍安寺の石庭を配した作品
(写真を見ただけでちょっとめまいがしそう。笑)もあり
何となく斬新な建築家のイメージが強かったので
会場を訪れるまで今回のシリアスなイメージのオブジェの作者と
全く一致しませんでした。
パンフレットを読んで初めて「あ、そうなんだ~!?」

棺のような木箱に丁重に横たえられた奇怪な石板の数々。
「抗生物質と子音にはさまれたアインシュタイン」
「オパーリン博士の祈り」
「ワックスマンの胸」
「無題」…等々
作品との関連付けを敢えて拒絶するような題名のオブジェが
並びます。
単身アメリカに渡る前にどんな事を考えながらこれらの
作品を制作したのでしょうか…。

古くから世の東西を問わず、埋葬の儀式は死者の復活や
来世での再生等の願いが込められていますが
意味を排したオブジェを埋葬する事により、新たな表現の
飛躍を試みようとする荒川さんの創造の軌跡が観て
とれるような気がします。

その後活動拠点をNYに移し
(渡米直後にマルセル・デュシャンと会見してるんですね)
パートナーの詩人マドリン・ギンズさんを得て
文字や記号を取り入れた「ダイヤグラム絵画」、更には
芸術や科学、哲学を巻き込んだ建築や庭園、都市設計へと
創作活動を広げていく事となります。。。

隣の展示室では『荒川修作と1960-70年代の美術』
と題してちょうどこの時代に隆盛し始めたポップ・アート
ネオダダ、ヌーヴォー・レアリスム、フルクサスなど
既存の表現形式にとらわれない様々な様式の作品が
紹介されていました。
壁を飾っていた荒川さんの巨大なダイヤグラム絵画にも
びっくりです!

あ、その中にちょっと気になった作品がありました。
オランダのアーティスト、ヤン・ディベッツ(Jan Dibbets)さん。
複数の写真とドローイングを組み合わせた
「三枚の写真(遠近法の修正)」(1968)
「サン・カッシャーノの天井」(1979)
なかなか素敵でしたよ。
展示作品とは違いますが…→[Link ]

※先日、荒川修作さんが2010年5月19日ニューヨーク市内の
 病院にて急逝された事を知りました。
 謹んでご冥福をお祈り申し上げます。
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ルノワール~伝統と革新@国立国際美術館 [アート]



相変わらず更新が滞っております。
一度止まってしまうとなかなか再開できないものです。
う~む。。。
暫くはリハビリ期間という事で…。

GWも間近の4月28日金曜日。
この日は大阪・中之島の国立国際美術館まで行ってきました。
お目当ては『ルノワール - 伝統と革新』展。
1月から4月初旬まで東京の国立新美術館で開催されていた
企画展の大阪巡回です。
巷に図版が溢れているせいか、何となく観た気になっている
ルノワールでしたが振り返れば大規模な回顧展を訪れるのは
今回初~
まとまった数の作品を一度に目にすることができる絶好の機会。
数年前に京都近代美術館で開催された『ルノワール+ルノワール』
展は見逃しましたしね

近年は視力低下のため作品解説のボードを読むのがしんどいので
素直に入り口で音声ガイドを借りました(笑)。
ナレーション担当は松坂慶子さん。
クロード・ドビュッシーの『世俗の踊り』やルノワール夫妻と
交流のあったエマニュエル・シャブリエの『アルバムの一葉』など
同時期に活躍したフランス人作曲家の音楽をBGMに
穏やかな解説が流れます。

さて、展示は
『第Ⅰ章 ルノワールへの旅』
『第Ⅱ章 身体表現』
『第Ⅲ章 花と装飾画』
『第Ⅳ章 ファッションとロココの伝統』
の四部構成、総数約80点あまり。
平日だというのに大変な賑わいでした。


「新聞を読む、クロード・モネ」(1872年)

親交のあった印象派の盟友クロード・モネの肖像。
友人を見つめる穏やかな視線がうかがえる良い絵です。


「アンリオ夫人」(1876年頃)

柔和で優しい雰囲気が好みです。
アンリオ夫人ことアンリエット・アンリオは
当時オデオン座に出演していた女優さんで
1870年代のルノワールのお気に入りのモデルの一人。
少なくとも11点のルノワール作品に描かれているそうです。

作風が大変華やかなのでルノワールって裕福な家の出身
なのかな?と勝手に思い込んでいたのですが、父は
仕立て職人、母はお針子、ルノワール自身は磁器の
絵付け職人から出発した事を知りちょっと意外でした。


「団扇を持つ若い女」(1879-1880年頃)

確か東京展のチラシに使われていましたね。
いかにもルノワール的、といった感じでしょうか。
現物の色はもっとずっと素晴らしかったですよ。


「アルジェリアの娘」(1881年)

ルノワールが40歳の頃に、当時フランスの植民地だった
北アフリカのアルジェリア旅行の経験を基に描かれた作品。
オリエンタルな衣装のきらびやかな色彩が目を惹きますね。


「ブージヴァルのダンス」(1883年)

縦181.9×横98.1cm、会場で一際異彩を放っていました
堂々たる作品。
オルセー美術館所蔵の「田舎のダンス」「都会のダンス」と
共にダンス三部作と呼ばれています。
モデルはシュザンヌ・ヴァラドン。
後にモーリス・ユトリロの母となる女性です。


「ジュリー・マネの肖像」(1894年)

ジュリー・マネは、画家エドゥワール・マネの弟ウージェーヌ
と女流画家ベルト・モリゾの子でこの時は16才。
若くして両親を失いルノアールが後見人の一人となりました。
ちょっと沈んで見える表情はそのせいかな。

そういえばお母さんのベルト・モリゾをマネが描いた傑作
「すみれのブーケをつけたベルト・モリゾ」
は現在東京の三菱一号館美術館で開催中の
「マネとモダンパリ」展で展示されていますね。
(7月25日まで。うぅっ、何とかして行きたいなぁ…)


「麦わら帽子の少女」(1885年)

ルノワールらしからぬタッチに目が留まりました呉市立美術館
所蔵の作品です。
前出の絵のモデルの、8歳の頃のジュリー・マネを描いた
「ジュリー・マネ(猫を抱く子ども)」(1887年)
というとても可愛らしい作品があるのですが
風貌がよく似ている気がします。モデルはジュリー?


「イレーヌ・カーン・ダンヴェール嬢」(1880年)

さて、本展覧会のハイライト、通称”可愛いイレーヌ”。
なんと珍しく大阪のみの特別展示です。

ふんわりとした栗色の巻き毛。
蒼いリボンと真直ぐ前をみつめる瞳、薄紅色の頬と唇。
暗緑色の背景より木漏れ日を浴びて輝かんばかりの
イレーヌ嬢の姿に感動の一言!

うーん、やっぱりルノワールは身近な人物や依頼されて
描いた肖像画が好みです。
(水浴のシリーズはちょっと。。。笑)
こうして並べてみると同じ人物を主題とした絵でも
様々な表現方法を試みているのですね。

「幸福の画家」ピエール=オーギュスト・ルノワール。
花と新緑の美しいこの季節にぴったりの展覧会。
とても楽しく拝見しました。

ルノワール - 伝統と革新
    RENOIR - Tradition and Innovation
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【会場】 国立国際美術館(大阪・中之島) [Link]
【会期】 2010年4月17日(土)~6月27日(日)
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響きあい、連鎖するイメージの詩情@目黒区美術館 [アート]

今回は版画をメインとした展覧会です。
東急東横線中目黒駅で下車、緑豊かな目黒川沿いの遊歩道
を歩くこと20分程。
目指す美術館は図書館や児童館・体育施設などが立ち並ぶ
区民センターの一角にひっそりとたたずんでいました。



線の迷宮(ラビリンス)・番外編
''響きあい、連鎖するイメージの詩情'' -70年代の版画集を中心に
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
【会場】:目黒区美術館[Link]
【会期】:2009年8月1日(土)~9月27日(日)

1970年代というのは日本の近代版画が独自の発展を
遂げ、新しい技法やメディアを組み合わせたユニーク
な作品が活発に制作された時期なのだそうです。
この展覧会は目黒区美術館が収蔵する70年代の版画集や
詩画集を中心にその多種多様な試みを振り返るという
版画作品が好きな私にとっては見逃せない好企画!

銅版画、木版画、石版画(リトグラフ)、写真製版
(シルクスクリーン)…。
一口に”版画”といっても実に様々な技法があるものですね。
会場では「1.連鎖するイメージ-黒の詩情」と題した静謐な
モノクロ作品をはじめ、カラフルなシルクスクリーンを中心
とした「2.連鎖するイメージ-色彩の詩情」、
文学と版画のコラボレーション「3.詩画集-言葉と版画」
の3つの章に分けてその多彩な世界が紹介されていました。

個人的には西洋の古い銅版画のイメージが好きなのでやはり
自然と「~黒の詩情」に展示されていた作品に目が行きます。

中でも柄澤齊さんのキリスト教の七つの大罪をモチーフにした
『贖罪領<七つの大罪による>』と、ランボーやカフカ
エドガー・アラン・ポーなど歴史上の人物を取り上げた
『肖像』シリーズに釘付け。(作品→[Link])
以前滋賀県立美術館でも作品を観る機会があり、個人的に
大注目の作家さんです。
嶋岡晨さんの詩に日和崎尊夫さんが版画をつけた詩画集『卵』
も素晴らしかった!

精緻極まりない漆黒の小宇宙。

実はお二人とも木口木版による作品です。

木版画というと、つい浮世絵などに代表されるような
日本独自の技法のように思いがちですよね。

浮世絵の桜の木を縦に切り出した板目木版に対して
別名西洋木版とも呼ばれる木口木版は、輪切りにした
黄楊(ツゲ)や椿、梨、楓などの硬い版木を用い
ビュランと呼ばれる先端を鋭く研いだ刃物で彫って
いくために細かい線による描写ができるのが特徴。
活字と同時に印刷できる事もありヨーロッパでは18世紀
末頃から書籍の挿絵などに盛んに用いられていたそうです。

ひょっとして今まで銅版画と勘違いしていたものも
随分あったのかな?
各技法の版の見本や作業工程を写真付きで解説したパネル
も展示されていてより理解が深まったような気がします。

区立の美術館ということで当初は小規模な展覧会を想像
していたのですが、展示作品も多く思わぬ程充実した内容。
本格的な銅版画用のプレス機を備えた工房もあって
期間中は様々なワークショップも開催されたようですね。
中には柄澤齊さんを講師に迎えて本格的な木口木版画の
体験コースも!
是非とも参加してみたかった…。

今回観て回った中でも1、2を争う展覧会となりました。
連日の美術館巡りの疲れにめげず行って本当に良かったです。


熊谷守一美術館 [アート]

東京都現代美術館で伊藤公象&メアリー・ブレア展を観た翌日
も午後から都内の美術館巡り。
以前playlogのあるメンバーさんのブログでこの美術館の事を
知り、いつか訪れてみたいと思っていました。



熊谷守一さん(1880生~1977没)は明治から昭和を生きた画家。
文化勲章の内示を「これ以上、人が来るようになっては困る」
と辞退する等、世俗を嫌い日本美術界からも距離を置き
その容貌から”画壇の仙人”と称されたほどだったとか。

そんな守一さんが亡くなるまでの45年間を過ごした旧宅跡地
に1985年、同じく画家・彫刻家である次女の榧(かや)さんに
より私設の美術館として創立。
2007年に全作品を豊島区に寄贈し、現在では豊島区立熊谷守一
美術館となっています。

場所はJR池袋駅で東京メトロ有楽町線に乗り換え一駅目
要町より徒歩10分程。
9月に入ったとはいえ訪れた当日はまだまだ残暑が厳しく
汗だくになりながら閑静な住宅街の中にある現地に到着。
コンクリート打ちっぱなしのシンプルな外観で
美術館の前の大きな欅(ケヤキ)の古木が涼しげです。

小さなカウンターで受付を済ましてすぐ脇にあるガラスの扉
を開けるととそこには1910年代から晩年にかけての油彩画を
中心に30点程の作品が。

黄褐色の背景。
簡略化され、力強い線と面で描かれた動植物たち。

普段の日常生活で何気なく目にするような自然の情景を
一つ一つ丁寧に、慈しむように描いた作品は穏やかで
暖かい雰囲気に満ちています。

中でも印象に残ったのが、肺結核を患い21歳の若さで
亡くなった長女の萬さんの死の翌年に描かれたという
「仏前」(1948)。

黒いお盆の上に供えられた3つの卵。
我が子の死を悼む、深く静謐な悲しみ。

大変な子煩悩だった守一さんは赤貧の中、長女の萬さん
の他に2人の子供を幼くして病気で亡くしたといいます。

展示室の片隅には愛用のチェロや使い込まれたイーゼル
中央には大きな木製のベンチが置かれ、落ち着いた雰囲気
の中で作品を心ゆくまで堪能することができました。

階段を上がった2階の第2展示室には墨絵や書を中心に。
蟻や蜻蛉、蛙などが生き生きと描かれた墨絵は
何度も下書きを繰り返し自分のカタチを追い求めたという
油彩画とは異なり、スピード感のある自由で快活な筆捌き。
書については「余技だから」と画商さんに無償で差し上げて
いたというエピソードも残っているそうです。



1階に併設されているCafe Kayaにて一休み。
地面より1段低く掘り込まれたカフェスペースの窓からは
守一さんが愛した庭を望むことができます。
周囲には絵画や彫刻作品が所狭しと並び、書架には美術書
の山。まるで画家のアトリエにお邪魔しているような優雅な
ひと時。



美術館の正面の壁には守一さんが好んで描いたという自筆に
よる蟻のレリーフが。
大正末期から昭和20年代にかけて、かつて池袋近辺には
若い芸術家を対象とした安価なアトリエ付き借家が100軒以上
も軒を連ね『池袋モンパルナス』と呼ばれていたそうですよ。



購入したポストカード。
代表作の「白猫」(1959)、「櫻」(1968)、
そして油彩画の絶筆「アゲ羽蝶」(1976)。
シンプルでユーモラスな中にも豊かな気品が感じられますね。

大変小さな美術館ですが、それを補って余りあるほどの
魅力的な場所。
機会があれば是非行ってみてください。

 ''豊島区立熊谷守一美術館'' [Link]
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【場所】:東京都豊島区千早2-27-6
【開館時間】:午前10時30分~午後5時30分
【休館日】:毎週月曜日・年末年始

メアリー・ブレア展@東京都現代美術館 [アート]

伊藤公象さんの作品をじっくり堪能した後はこの日
開かれていたもう一つの企画展。
ウォルトディズニー・スタジオの知られざる女性アーティスト
メアリー・ブレア展へと向かいます。



''メアリー・ブレア展'' - ウォルトが信じたひとりの女性。
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【会場】:東京都現代美術館[Link]
【会期】:2009年7月18日(土)~10月4日(日)

まずは展覧会の冒頭、第1ゾーンでは『若き日のメアリー』と題して
カリフォルニア・スタイルと呼ばれる水彩画が、夫リー・ブレアの
作品と共に展示されています。
意外なプロフィールのスタートですね。
しかしながら大胆な色使いと舞台の上の様な明暗を強調した表現に
後のスタイルが見て取れるような気がします。

1929年の世界恐慌の余波を受け安定した収入を得られなかった
彼女らはその後著名なアニメーターである夫の兄プレストン・
ブレアの紹介で当時既に隆盛を極めつつあった
ディズニー・スタジオへ入社。

次の第2ゾーン『ディズニーでの日々』では
「シンデレラ」「ふしぎの国のアリス」「ピーター・パン」等
作品の世界観を決定付けるコンセプト・アートと呼ばれる
彼女が手がけた膨大なイメージスケッチを展示。
素晴らしい!!
ディズニーアニメの夢のような色彩世界は彼女が確立したと
言っても過言ではないのでは?
幻の作品となった「ペネロペと十二ヶ月」と「ベイビー・バレエ」
のコンセプトアートでは季節毎のユニークなキャラクターデザイン
やドガを思わせる愛らしい赤ん坊の踊り手の描写が楽しかった!
未制作に終わったのが悔やまれますね。

他にも彼女がウォルト・ディズニーに注目されるきっかけとなった
南米取材旅行の日記やスケッチの展示では、細かい筆跡や
現地の子供たちの生き生きとした描写に彼女の人となりが表れて
いるようで興味深かったですよ。

第3ゾーンの『ニューヨーク・ニューライフ』では
ディズニー社を離れてフリーランスとなって以降の絵本の挿絵
や広告、商品のパッケージデザインの仕事の数々。
もうファンシーさ爆発!(笑)
実に素敵ですね。

そして最後となる第4ゾーン『スモール&ビッグ』では
ウォルトのたっての願いで引き受けた
「イッツ・ア・スモール・ワールド」のデザイン原画の展示。
ぐるりと円を描くような展示スペースでは複数のプロジェクター
による投影でディズニーランドの名アトラクションを疑似体験です。
メアリーのピースフルな作品世界の集大成ともいえる印象深い
エンディング。
いやー、楽しい展覧会でした!



展覧会を観る前に本展の展示デザイン総合監修者の増田春雄さん
による「展示デザイナーが語る~メアリー・ブレアとの出会い」
と題した特別公演に参加する機会に恵まれたのですが
アメリカ研修時に知り合ったメアリーゆかりの人々との交流など
東京ディズニーランド開園当時にパークの運営管理やデザインに
深く関わった増田さんならではのお話を沢山お聞きする事が
できました。
今回の展示デザインでは展示上の流れを重視するあまりわざわざ
エスカレータを通常の進行方向とは逆向きにするなどの苦労話も。



展示総数約500点。
充実の内容に最後は閉館ぎりぎりの時間となってしまいました。
グッズ売り場は女性陣の争奪戦と化しており早々に断念です。
無理もないか~。

伊藤公象WORKS 1974-2009@東京都現代美術館 [アート]

ここからしばらくは先月9月の大型連休の際に東京で
観てきた展覧会等についての感想を。

連休初日となる9月12日土曜日は始発間もない
新大阪発東京行きの新幹線で移動。
江東区の東京メトロ半蔵門線清澄白河駅から歩いて10分程の
東京都現代美術館に着いたのは早朝9時過ぎです。
この日は丸1日ここで過ごすつもりで気合入りまくり。
朝日が眩しいー。



''伊藤公象 WORKS 1974-2009'' 秩序とカオス
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【会場】:東京都現代美術館[Link]
【会期】:2009年8月1日(土)~10月4日(日)
    会場での展示の様子はこちらから→[Link]

伊藤公象さんは床に配置した無数の陶製のオブジェによる作品
で知られ、日本における現代陶作家のパイオニアのような
方だそうですが実際に目にするのはこの日が初めて。
開館して間もない展示ブースは隣のメアリー・ブレア展
の盛況振りに比べると人影もなく集中してじっくり観れそう。

エントランスでまず出迎える作品が『44の染体』(1976)。
長方形の白い台座に規則正しく置かれた、両手に乗るくらいの
陶製のオブジェ。
チューブから絞り出した黒絵の具を包み込んだような丸い物体は
一つとして同じ形のものはなく無機質にもかかわらず不思議な
生命力のようなものが感じられます。

その横には異なる素材で構成された2つの円が重なり合う
『染体No.3』(1978)。
軽やかなアクリルとマットな陶器の質感との対比が鮮やか。

粘土を薄くスライスした粘土を即興的に手で丸める手法による
多軟面体(たなんめんたい)というシリーズは1970年代から
一貫して製作し続けているそうです。
隣の大きな部屋には同シリーズ最新作『濃紫の多軟面体』(2009)。
1000を超えるピースで埋め尽くされた床。
なんだか深海に群生する未知の生物といった印象を受けました。

一方、明るいアトリウム空間の床に設置されていたのは代表作
『アルミナのエロス(白い固形は…)』(1984/2009)。
純白の立方体がひび割れ崩れ落ちる過程が波紋のように表現
されたこの作品からは一見、一つ一つのピースが無造作に
並べられているようでも実は明確な美意識を持って細心の
注意を払って配置されていることが窺えます。



『土の襞 踊る焼凍土』(2008)
中庭の作品は撮影可でしたので一枚パチリ。
どうでしょう。カオスの中に秩序が垣間見えるでしょうか?
陶土を一度凍らせてから焼くという常識破りの方法により
朽木や流木のような質感が表出。
鮮やかな赤い色は鉄分を多く含む土だからだそうです。

ふと気がついたのがここからだと美術館の窓ガラスに
写りこんだ外の『土の襞~』とガラス越しにみるアトリウム
内の『アルミナのエロス~』の2作品がちょうど先程見た
『染体No.3』のように円が重なってみえること。
そこまで計算して設置してるのかな? 驚きですね。

屋外にはその他、虹色の光を放つ『JEWELの襞』(2002/2009)や
陶器とは思えないようなピンク色が生々しい客土シリーズ
『長石による襞No.2』、ワークショップに参加した一般の人に
よる粘土で作ったオブジェなど美術館の空間を生かした多彩な
作品群は観ていて飽きません。

再び屋内に戻り先に進むと今度は大きな真っ白の空間。
床にはざらざらした土と金属的な輝きのプラチナ釉薬のピース
同士がせめぎ合う『木の肉・土の刃Ⅱ』(1993)。
壁に掛けられた60枚の陶板『土の襞-青い凍結晶』(2007)は
四角い陶製の皿に流し込んだ泥漿を一度凍らせ焼成した作品。
緑青のような皿の表面には鳥の羽とも羊歯の葉の化石ともつかない
様々な幾何学模様が刻まれ、とても自然にできたとは思えない程
の緻密さに目を奪われます。

そして後半、今回の展覧会のハイライトとも言える作品は
斜めのスポットライトに妖しく浮かび上がる
『木の肉・土の刃』(1991)。
ホワイトチョコレートを鉋で削ったような薄く繊細な
エッジの質感。
周囲を廻る歩みに合わせて表情を刻々と変化させる様子は
溜息の出るほど美しいものでした。

この35年間一貫して「有機性」をテーマに製作を続けてきた
という伊藤公象さんは今年で御歳77歳。
敢えて作為を排し自然の成すがままに任せた造形の、無限とも
思える無意識の繰り返しの中に秩序~美を見出すという手法
は新鮮な驚きに満ちていました。
生命の躍動感とは、個の多様な在りようから感じられるもの
なのかもしれませんね。



展覧会を観た後は”タッチ&トーク”というイベントに参加。
作品を前に話し上手の女性の学芸員さんから詳細な解説を
聞く事ができました。
更に展示作品のサンプルを実際に手にとって触ってみることが
可能。
冷んやりした手触りを確かめたり、意外な軽さに驚いたり
と楽しかったです。
記念にワークショップで使ったという粘土を頂きました。



館内のレストランで遅めの昼食は、鮭のグリルとカボチャの
スープに天然酵母の自家製パン。ふーっ、やれやれ。
さてこの後はメアリー・ブレア展に突入です!

ルーヴル美術館展@京都市美術館 [アート]



京都国立近代美術館でウィリアム・ケントリッジ展を観た後は
赤い大鳥居を挟んで向かい側にある京都市美術館で開催していた
ルーヴル美術館展へ。
実はこの日の当初の目的はここで展示されているフェルメールの
作品だったのですがお昼過ぎに着いた頃には既に長蛇の列で入場
50分待ち。
「きっと中は込み合って鑑賞どころじゃないだろうな。
と思い直し、ケントリッジ展を観た後に閉館までの僅かな時間を
見計らっての見学となりました。



''ルーヴル美術館展'' - 17世紀ヨーロッパ絵画 -
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【会場】:京都市美術館(京都・岡崎公園)[Link]
【会期】:2009年6月30日(土)~9月27日(日)

多くの傑出した芸術家を生み出し”黄金の世紀”と呼ばれる
17世紀ヨーロッパの絵画を、ルーブル美術館が誇る71点の
コレクションを元に
「黄金の世紀とその陰」、「大航海と科学革命」、
「聖人の世紀における古代文明の遺産」
の3つのキーワードで読み解く展覧会。
フリップを読みながら順番に観ていけば展覧会の意図する
ところや作品に対する理解も深まるのでしょうが
人の多さに加えて如何せん、時間が残り僅か。
とりあえずはお目当ての作品を優先して観る事に。

レンブラント・ファン・レインの自画像はビロードの
ような黒の着衣に輝く金の鎖のコントラストが美しい。
数多くの自画像を描いているレンブラントですがこの
作品は若々しく自信に満ち溢れた表情をしています。

『リュートを持つ道化師』はフランス・ハルス作。
鮮やかな赤い衣に身を包み、陽気にリュートを鳴らす
道化師の一瞬の表情を捉えた作品はとっても現代的。
荒々しいタッチにも躍動感が感じられますね。

そして今回是非見たいと思っていた
ヨハネス・フェルメールの『レースを編む女』は
警備員が横に立つ物々しい雰囲気の中で透明なケース内に
鎮座していました。
24cm×21cm。現存するフェルメール作品では最小のものです。
斜め上から差し込む光に立体的に浮かび上がる顔立ち。
鮮烈な輝きを放つ黄色の衣。
瑞々しいばかりの手前の赤い刺繍糸。
感動です。
長い時間並んで待っただけの甲斐がありました(涙)。

その他にも夕日が沈む港湾を叙情的に描いたクロード・ロランの
『クリュセイスを父親の元に返すオデュッセウス』や
ペーテル・パウル・ルーベンスの大作
『ユノに欺かれるイクシオン』
鮮やかな衣を身にまとったマリア像、シモン・ヴーエの
『エスランの聖母』。
そしてロウソクの灯りをかざす幼な子キリストの姿を
思案げに見つめる養父ヨセフを描いた
ジョルジュ・ド・ラ・トゥールの『大工ヨセフ』等々。。。

閉館間際には次第に人も少なくなり、作品を間近で心行くまで
堪能する事ができました。
正に珠玉の17世紀ヨーロッパ絵画の世界。
美術館のハシゴの疲れを吹き飛ばしてしまうような
素晴らしい展覧会でしたよ。





帰りに平安神宮の西にある京都では有名な洋食屋さん
「グリル小宝」で晩御飯。
カツはサックリ柔らか。ハンバーグはジューシー。

お腹も心も大満足で帰宅の途につきました。


ウィリアム・ケントリッジ@京都国立近代美術館 [アート]

まだまだ厳しい残暑の残る9月5日の土曜日。
朝から真夏を思わせるお天気に恵まれたこの日は久々!
京都市左京区の岡崎公園内にある京都国立近代美術館へと
行ってきました。



''ウィリアム・ケントリッジ'' - 歩きながら歴史を考える
                   そしてドローイングは動き始めた…
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【会場】:京都国立近代美術館[Link]
【会期】:2009年9月4日(金)~10月18日(日)

ウィリアム・ケントリッジは1955年南アフリカ共和国生まれ
ヨハネスブルグ在住の美術家・映像作家。
1980年代末頃から制作を開始した、手書きによるドローイングを
コマ撮りしたアニメーションの作品で世界的な注目を集めるように
なったそうです。

展覧会場はフィルム・インスタレーション3点を含む19点の
映像作品と36点の素描・63点の版画で構成。
展示作品で特に大きなスペースを割いていたのが初期の代表作
『プロジェクションのための9つのドローイング』(1989–2003)。

オフィスを牛耳る太目の白人男性。
薄暗い炭鉱。荒れ果てた荒野。行進する人々の群れ…。
作者自身をモデルとした架空の人物、ソーホー・エクスタインを
主人公として南アフリカの過去の歴史を語ります。

木炭やパステルで描いたドローイングを少しずつ部分的に
描きなおしてコマ撮りするという自ら「石器時代の映画制作」
と呼ぶ手法で作成された映像は、非常に重々しく鬱々としていて
観るものに不穏な空気を感じさせますね。

上映されていた5つの映像作品は入り口で受け取った
ヘッドセットと手元の受信機のスイッチで作品毎に音声を切替える
仕組みで、なるほど!これなら同じ展示室で同時上映が可能。
大きな部屋で一連の映像が映し出される様子も強烈な印象を
残しました。

他にも一連の作品で使われたドローイングや版画の数々、
ショスタコーヴィチのオペラ「鼻」を題材としたパフォーマンス
映像、三脚に乗った合わせ鏡で二枚のドローイングを合成して
みせるオブジェなど充実の内容。
ゴーゴリとケントリッジ、滑稽さと悲哀が同居する作品世界に
相通ずるものを感じます。

近作では奇妙な形をした影絵が列をなして行進する「影の行進」や
立体メガネで観る銅版画、鏡面の円筒に映し出される
アナモルフォーズ(歪像画)の作品など、更にシンプルな初期の
映像手法に立ち帰っているのが興味深かったです。
個人的には初期の南アの歴史的色合いの濃い一連の映像より
こちらの方が好きかな。

2003年の作品。
  気が遠くなるような作業。
  一体どのくらい時間がかかっているのでしょうね。

『Automatic Writing』 -William Kentridge -




美術館へ向かう前に「喫茶六花」でランチを頂きました。
この日のメニューは豚肉とジャガイモの白ワイン煮と新鮮野菜
のサラダ、ゴーヤのおひたし。
健康的、かつボリューム満点。何より素材が美味しい!



飾り気のないシンプルな食器類も良い感じ。
純喫茶的な佇まいでとっても落ち着けます。
最近岡崎公園を訪れる時は決まってここです。
お気に入り。


連休初日。 [アート]

秋の連休は実家に戻って過ごしております。
初日の昨日は江東区にある東京都現代美術館に行って来ました。
朝一から閉館時間まで(ゆっくり観すぎ。笑)
それでも時間が足りない位だったのですが。

穏やかな日が続きますね。
今日も朝から吹く風が心地よいです。

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