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伊藤公象WORKS 1974-2009@東京都現代美術館 [アート]

ここからしばらくは先月9月の大型連休の際に東京で
観てきた展覧会等についての感想を。

連休初日となる9月12日土曜日は始発間もない
新大阪発東京行きの新幹線で移動。
江東区の東京メトロ半蔵門線清澄白河駅から歩いて10分程の
東京都現代美術館に着いたのは早朝9時過ぎです。
この日は丸1日ここで過ごすつもりで気合入りまくり。
朝日が眩しいー。



''伊藤公象 WORKS 1974-2009'' 秩序とカオス
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【会場】:東京都現代美術館[Link]
【会期】:2009年8月1日(土)~10月4日(日)
    会場での展示の様子はこちらから→[Link]

伊藤公象さんは床に配置した無数の陶製のオブジェによる作品
で知られ、日本における現代陶作家のパイオニアのような
方だそうですが実際に目にするのはこの日が初めて。
開館して間もない展示ブースは隣のメアリー・ブレア展
の盛況振りに比べると人影もなく集中してじっくり観れそう。

エントランスでまず出迎える作品が『44の染体』(1976)。
長方形の白い台座に規則正しく置かれた、両手に乗るくらいの
陶製のオブジェ。
チューブから絞り出した黒絵の具を包み込んだような丸い物体は
一つとして同じ形のものはなく無機質にもかかわらず不思議な
生命力のようなものが感じられます。

その横には異なる素材で構成された2つの円が重なり合う
『染体No.3』(1978)。
軽やかなアクリルとマットな陶器の質感との対比が鮮やか。

粘土を薄くスライスした粘土を即興的に手で丸める手法による
多軟面体(たなんめんたい)というシリーズは1970年代から
一貫して製作し続けているそうです。
隣の大きな部屋には同シリーズ最新作『濃紫の多軟面体』(2009)。
1000を超えるピースで埋め尽くされた床。
なんだか深海に群生する未知の生物といった印象を受けました。

一方、明るいアトリウム空間の床に設置されていたのは代表作
『アルミナのエロス(白い固形は…)』(1984/2009)。
純白の立方体がひび割れ崩れ落ちる過程が波紋のように表現
されたこの作品からは一見、一つ一つのピースが無造作に
並べられているようでも実は明確な美意識を持って細心の
注意を払って配置されていることが窺えます。



『土の襞 踊る焼凍土』(2008)
中庭の作品は撮影可でしたので一枚パチリ。
どうでしょう。カオスの中に秩序が垣間見えるでしょうか?
陶土を一度凍らせてから焼くという常識破りの方法により
朽木や流木のような質感が表出。
鮮やかな赤い色は鉄分を多く含む土だからだそうです。

ふと気がついたのがここからだと美術館の窓ガラスに
写りこんだ外の『土の襞~』とガラス越しにみるアトリウム
内の『アルミナのエロス~』の2作品がちょうど先程見た
『染体No.3』のように円が重なってみえること。
そこまで計算して設置してるのかな? 驚きですね。

屋外にはその他、虹色の光を放つ『JEWELの襞』(2002/2009)や
陶器とは思えないようなピンク色が生々しい客土シリーズ
『長石による襞No.2』、ワークショップに参加した一般の人に
よる粘土で作ったオブジェなど美術館の空間を生かした多彩な
作品群は観ていて飽きません。

再び屋内に戻り先に進むと今度は大きな真っ白の空間。
床にはざらざらした土と金属的な輝きのプラチナ釉薬のピース
同士がせめぎ合う『木の肉・土の刃Ⅱ』(1993)。
壁に掛けられた60枚の陶板『土の襞-青い凍結晶』(2007)は
四角い陶製の皿に流し込んだ泥漿を一度凍らせ焼成した作品。
緑青のような皿の表面には鳥の羽とも羊歯の葉の化石ともつかない
様々な幾何学模様が刻まれ、とても自然にできたとは思えない程
の緻密さに目を奪われます。

そして後半、今回の展覧会のハイライトとも言える作品は
斜めのスポットライトに妖しく浮かび上がる
『木の肉・土の刃』(1991)。
ホワイトチョコレートを鉋で削ったような薄く繊細な
エッジの質感。
周囲を廻る歩みに合わせて表情を刻々と変化させる様子は
溜息の出るほど美しいものでした。

この35年間一貫して「有機性」をテーマに製作を続けてきた
という伊藤公象さんは今年で御歳77歳。
敢えて作為を排し自然の成すがままに任せた造形の、無限とも
思える無意識の繰り返しの中に秩序~美を見出すという手法
は新鮮な驚きに満ちていました。
生命の躍動感とは、個の多様な在りようから感じられるもの
なのかもしれませんね。



展覧会を観た後は”タッチ&トーク”というイベントに参加。
作品を前に話し上手の女性の学芸員さんから詳細な解説を
聞く事ができました。
更に展示作品のサンプルを実際に手にとって触ってみることが
可能。
冷んやりした手触りを確かめたり、意外な軽さに驚いたり
と楽しかったです。
記念にワークショップで使ったという粘土を頂きました。



館内のレストランで遅めの昼食は、鮭のグリルとカボチャの
スープに天然酵母の自家製パン。ふーっ、やれやれ。
さてこの後はメアリー・ブレア展に突入です!
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コメント 7

miz

>Macoringさん
>decoboさん
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miz

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miz

>小梅ねこさん
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by miz (2009-11-09 01:42) 

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