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熊谷守一美術館 [アート]

東京都現代美術館で伊藤公象&メアリー・ブレア展を観た翌日
も午後から都内の美術館巡り。
以前playlogのあるメンバーさんのブログでこの美術館の事を
知り、いつか訪れてみたいと思っていました。



熊谷守一さん(1880生~1977没)は明治から昭和を生きた画家。
文化勲章の内示を「これ以上、人が来るようになっては困る」
と辞退する等、世俗を嫌い日本美術界からも距離を置き
その容貌から”画壇の仙人”と称されたほどだったとか。

そんな守一さんが亡くなるまでの45年間を過ごした旧宅跡地
に1985年、同じく画家・彫刻家である次女の榧(かや)さんに
より私設の美術館として創立。
2007年に全作品を豊島区に寄贈し、現在では豊島区立熊谷守一
美術館となっています。

場所はJR池袋駅で東京メトロ有楽町線に乗り換え一駅目
要町より徒歩10分程。
9月に入ったとはいえ訪れた当日はまだまだ残暑が厳しく
汗だくになりながら閑静な住宅街の中にある現地に到着。
コンクリート打ちっぱなしのシンプルな外観で
美術館の前の大きな欅(ケヤキ)の古木が涼しげです。

小さなカウンターで受付を済ましてすぐ脇にあるガラスの扉
を開けるととそこには1910年代から晩年にかけての油彩画を
中心に30点程の作品が。

黄褐色の背景。
簡略化され、力強い線と面で描かれた動植物たち。

普段の日常生活で何気なく目にするような自然の情景を
一つ一つ丁寧に、慈しむように描いた作品は穏やかで
暖かい雰囲気に満ちています。

中でも印象に残ったのが、肺結核を患い21歳の若さで
亡くなった長女の萬さんの死の翌年に描かれたという
「仏前」(1948)。

黒いお盆の上に供えられた3つの卵。
我が子の死を悼む、深く静謐な悲しみ。

大変な子煩悩だった守一さんは赤貧の中、長女の萬さん
の他に2人の子供を幼くして病気で亡くしたといいます。

展示室の片隅には愛用のチェロや使い込まれたイーゼル
中央には大きな木製のベンチが置かれ、落ち着いた雰囲気
の中で作品を心ゆくまで堪能することができました。

階段を上がった2階の第2展示室には墨絵や書を中心に。
蟻や蜻蛉、蛙などが生き生きと描かれた墨絵は
何度も下書きを繰り返し自分のカタチを追い求めたという
油彩画とは異なり、スピード感のある自由で快活な筆捌き。
書については「余技だから」と画商さんに無償で差し上げて
いたというエピソードも残っているそうです。



1階に併設されているCafe Kayaにて一休み。
地面より1段低く掘り込まれたカフェスペースの窓からは
守一さんが愛した庭を望むことができます。
周囲には絵画や彫刻作品が所狭しと並び、書架には美術書
の山。まるで画家のアトリエにお邪魔しているような優雅な
ひと時。



美術館の正面の壁には守一さんが好んで描いたという自筆に
よる蟻のレリーフが。
大正末期から昭和20年代にかけて、かつて池袋近辺には
若い芸術家を対象とした安価なアトリエ付き借家が100軒以上
も軒を連ね『池袋モンパルナス』と呼ばれていたそうですよ。



購入したポストカード。
代表作の「白猫」(1959)、「櫻」(1968)、
そして油彩画の絶筆「アゲ羽蝶」(1976)。
シンプルでユーモラスな中にも豊かな気品が感じられますね。

大変小さな美術館ですが、それを補って余りあるほどの
魅力的な場所。
機会があれば是非行ってみてください。

 ''豊島区立熊谷守一美術館'' [Link]
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
【場所】:東京都豊島区千早2-27-6
【開館時間】:午前10時30分~午後5時30分
【休館日】:毎週月曜日・年末年始
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コメント 13

nampoo

いいかんじのポストカードですね[嬉しい顔]
by nampoo (2009-11-02 02:05) 

miz

>nampooさん
油彩なのですが、不思議と日本画を思わせるような
情緒にあふれていますよね。[ぴかぴか]

お気に入りの画家さんです。[嬉しい顔]
by miz (2009-11-02 16:48) 

miz

>decoboさん
>tttさん
[ハート]マーク、ありがとうございます!![ムード]
by miz (2009-11-02 16:49) 

rose

mizさん こんばんは[嬉しい顔] お邪魔しております^^
無知な私は
「熊谷守一」さんの名を 今日 知りました[飛び散る汗]
ポストカードを拝見し、なぜか 心惹きつけられますね[揺れるハート]
とくに 私の場合 [猫]ネコさんのが^^
by rose (2009-11-02 20:24) 

miz

>roseさん
こんばんは!
いつもありがとうございます。[嬉しい顔]

熊谷守一さんにとってネコはお気に入りのモチーフ
だったそうで、作品にも繰り返し取り上げています。[猫][ぴかぴか]
ネコ作品と守一さんの言葉で構成した
『熊谷守一の猫』という画文集も出版されてますよ!
以前名古屋の美術館のミュージアムショップで
立ち読みしたのですがその時に買えばよかったと
後悔しきりです。[汗]
by miz (2009-11-02 23:12) 

miz

>N@Oさん
[ハート]マーク、ありがとうございます!![かわいい]
by miz (2009-11-04 00:25) 

ここん

あら!今は公立なんですね。知りませんでした。熊谷、わたしも好きです。素朴な表現の中に洗練されたデザイン性があってそのせめぎあいがおもしろいと思います。わたしも行ってみたいな。
by ここん (2009-11-04 01:51) 

miz

>ここんさん
良いですよねぇ!
思ったより作品が小さかったり、キャンバスではなく
木の板の上に描かれていたり、黒く見える輪郭線は
実は木の板の目地だったりと実際に観てみると
多くの発見がありました。
駅からちょっと遠いけど東京へ行った時には是非!

そういえば岐阜にも熊谷守一記念館がありますね。[嬉しい顔]
by miz (2009-11-04 02:10) 

miz

>coconyanさん
>本物ホネツギマン(アビブ)さん
>うららさん
[ハート]マーク、サンキューです!![ムード]
by miz (2009-11-04 18:22) 

miz

>小梅ねこさん
>Macoringさん
[ハート]マーク、ありがとうございます!![るんるん]
by miz (2009-11-08 01:17) 

とらぐぅ

私もいつか行けるといいなぁ。。

今日、部屋の片づけをしていたら、15年前の熊谷さんの展覧会のチケットが出てきました。
チケットにはmizさんのポストカードの『白猫』が[嬉しい顔]

愛知県美術館には木村定三コレクションというのがあって、熊谷さんの作品を多数含んでいます。
なので、熊谷さん関連の画集などは常時ありますよ。
また名古屋にお越しの際は、ぜひ覗いてみてください[嬉しい顔]
by とらぐぅ (2009-11-09 00:51) 

miz

>とらぐぅさん
熊谷守一さんの作品は、生き方そのものがそのまま
絵になって顕れているような気がしますよね。
東京へお越しの際は是非観に行ってみて下さい。[嬉しい顔]

そうそう!他にも確か愛知県美術館には猫のストラップ
などのグッズも置いてありましたね。
池袋の美術館にあればと思ったのですが
残念ながら絵葉書だけでした。[失恋]
by miz (2009-11-09 01:28) 

miz

>riverさん
[ハート]マーク、ありがとうございます!![ひらめき]
by miz (2009-11-18 23:12) 

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